今日は、ダブルブレスト(ダブル前)のテーラードジャケット、ブレザーを取り上げます。ウール(羊毛)地もコットン(綿)地も。《最終更新日: 2016年4月8日》
ダブルブレスト(ダブル前)のテーラードジャケット、ブレザー
ダブルブレストはジャケットの定番型なのですが、バブル期の印象が強いのか、しばらく敬遠されていた印象があります。しかしやっとその呪縛(?)が解けたのか、近年は大いに注目されていますね。雌伏の期間が長かったぶん、新鮮なのでは。
ダブルのスーツだと特に若い人には「エラそう」に見えて着こなしにくかったりしますが、ジャケットやブレザーなら若い人にも比較的着こなしやすいと思います。
近年は、伸縮性があって着心地がラクなジャージー素材のジャケットも人気です。
ダブルブレストのジャケットの種類(分類)
ダブルブレストのジャケットをボタンの仕様で分類すると、主なところは以下のようになります。
- 6つボタン3つ掛け
ボタンを全部留める6つボタンで、Vゾーンが狭くなるのが特徴。1960年代(60年代)のモッズとかグループサウンズなどのスタイルによく見られました。制服っぽい雰囲気で、ミリタリージャケットにも多いかな。
- 6つボタン2つ掛け
一番上のボタンを留めない6つボタンで、最も一般的なダブルブレストの型といえるでしょう。一番上のボタンは離れた位置にあるので、完全に遊びボタンです。
こちらは、ストライプ柄やチェック柄の6つボタン2つ掛けブレザー。
- 6つボタン1つ掛け
一番下のボタンのみ留める6つボタンで、Vゾーンが広くなるのが特徴。2つ掛けよりもくだけた(もしくは華やかな)印象になると思います。
ちなみに私が渋カジブームのときに着ていたブレザーは、この型です。
- 4つボタン2つ掛け
4つボタンは6つボタンよりもボタン数が少ないので、仰々しくならないのが特徴。また小柄な人がダブルを着るなら、6つボタンよりも4つボタンのほうが似合いやすいかも。
- How to Wear an Ascot - Ascots and Silk Scarves - He Spoke Style
- Leather Portfolio - Leather Document Holder - He Spoke Style
- rose & born's finest // men's fashion blog
ちなみに昔ヴァン・ヂャケット(VAN Jacket)では、この手の4つボタン2つ掛けのジャケットのことをニューポートと呼んでいました。正式(?)なニューポートは、サックスーツと同様胸ダーツのないボックスシルエット。
- 4つボタン1つ掛け
一番上のボタンを留めない4つボタンで、ロングターンとも呼ばれるみたい(6つボタン1つ掛けもそう呼ばれるかも)。今上天皇がよくお召しになっていまして、優雅な着こなしはさすがです。
- 2つボタン1つ掛け
最もボタン数が少ないダブルブレスト。あまり一般的ではありませんが、あるにはあります。
ダブルブレストの特徴としては、サイドベンツでピークトラペル(ピークドラペル、襟先がとがっている)仕様のものが多いですね。
ダブルブレストのボタンの留め方
シングルブレスト(シングル前)のジャケットは、一番下のボタンを留めないのが一般的な考え方です。ボタンを留めないことを前提にデザインされているものが多いので、一番下のボタンを留めるとヘンなシワが入ってしまうことがあります。
一方、ダブルブレストの場合はどうでしょう。特に「6つボタン2つ掛け」や「4つボタン2つ掛け」の場合が気になりますが、どうやら一番下のボタンは留めても留めなくても問題ないようです(たぶん格式の高い場でもOKなのでは)。
ダブルブレストの場合、一番下のボタンはその上のボタンの真下に付けられていますので、一番下のボタンを留めてもシワが入ることはありません。
また、ちょっとくだけた感じを出したいなら、「6つボタン2つ掛け」や「4つボタン2つ掛け」で一番下のボタンのみ留める方法もあります。
ちなみに、ダブルジャケットをいつもお召しになっているイギリスのチャールズ皇太子は、たいてい「6つボタン2つ掛け」を下2つ掛けでお召しになっていますね。一方最近のMen's EXに掲載されている着こなしは、ほぼ一番下のボタンを留めない中1つ掛けのようです。
ダブルブレストの着こなし
着こなし例を実際に見てみましょう。こちらは、チェック柄のボタンダウンシャツに合わせた非常に何気ない着こなし。ダブルブレストジャケットはVゾーンが狭くなるので、シャツをサラッと合わせるだけでもけっこうサマになるのです。
こちらは、コンバース(Converse)のオールスター(All-Star)を合わせた着こなし。ボーダー柄のTシャツが効いていますね。
こちらは、クルーネックセーターに合わせた着こなし。
- On the Street…..Mr. Cortina, Paris - The Sartorialist
- Street Style de Alberto Bringas por Londres - Los malditos mocasines
こちらは、デニムシャツとタートルネックセーターを合わせたちょっとラギッド寄りの着こなし。
こちらは、ダメージ加工されたジーンズを合わせたちょっとハイブロー(?)な着こなし。ジーンズ以外を上質なものでまとめるのがコツかな。
こちらは、信濃屋の白井俊夫氏の着こなし。さすが貫禄があります。
こちらには、フェアファクス・コレクティブ(Fairfax Collective)の慶伊道彦氏のニューポートブレザーの着こなしがありました。うーん、アメトラ!
Brooks Brothers(ブルックス・ブラザーズ)
ゴールデン・フリース(The Golden Fleece、金羊毛)でおなじみのブルックス・ブラザーズ(Brooks Brothers)は、1818年創業の究極(?)のアメトラブランド。
ブルックス・ブラザーズは、ダブルブレストのブレザーも定番としてしっかりつくっています。6つボタン2つ掛け、サイドベンツ仕様の堂々とした仕上がり。
J. Press(J・プレス)のニューポート・ブレザー
J・プレス(J. Press)は、1902年創業のアメリカはコネチカット州のアメトラブランド。ブルックス・ブラザーズは良くも悪くも国際的なブランドといえますが、J・プレスはアメトラどっぷり(?)という印象があります。
こちらは、4つボタン2つ掛けのダブルブレストブレザー。胸ダーツがなく、ヴァン・ヂャケット(VAN Jacket)のいうところのニューポート・ブレザーといえます。ピークラペルでサイドベンツ、袖ボタン2つ仕様。生地はペピン・メリノ(Peppin Merino)というトロピカルウール地で、春夏から初秋向き。
Tagliatore(タリアトーレ)
タリアトーレ(Tagliatore)は、1998年創業のイタリアのテーラードブランド。ここ数年は急激に評価を高めているようにみえます。
Montecalro(モンテカルロ)と命名している、袖裏のみで裏地なし、芯地・肩パッドなどの副資材を省いた軽やかなアンコンジャケットが主力商品です。着脱可能なラペルピンが付いています。ドロップ7。
ダブルブレストのMontecalroは、6つボタン2つ掛け、サイドベンツ仕様。堂々とした雰囲気ですが、Montecalro仕様で身幅も細め、さらにパッチポケット仕様で、今っぽく着られます。
細かい織り柄のネイビー無地はサマーウール製、メタルボタン仕様の渋いシャドーチェック柄はストレッチの効いたコットンウール製。いずれも春夏秋向きくらいです。
Mugello(ムジェッロ)は、ドロップ9の細身のライン。こちらはバーニーズ・ニューヨーク(Barneys New York)が別注したダブルブレストのMugelloで、春夏秋向きのサマーウール製です。
Lardini(ラルディーニ)
近年新メンバーを加えいまっぽくなったのラルディーニ(Lardini)は、1978年創業のイタリアブランド。
パッドや芯といった副資材を極力省いたアンコン仕様のジャケットは、簡単にいまっぽく着こなせること請け合い。ラペル(下襟)のコサージュが目印です。
Boglioli(ボリオリ)
「クラシック&モダン」をコンセプトにしているというボリオリ(Boglioli)は、1890年代に創業したイタリア北西部ガンバラのスーツブランド。
ダブルブレストもつくっています。もちろん今っぽい仕上がりです。
他の記事も……
なお、ブレザーを集めた記事や、テーラードジャケットを集めた記事がありますので、それらも併せてご覧ください。
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追記
- (2010年9月25日)2010年度秋冬最初の更新。
- (2013年4月28日)2013年春夏最初の更新。
- (2013年12月7日)2013年度秋冬最初の更新。
- (2014年4月18日)2014年春夏最初の更新。
- (2014年10月28日)2014年度秋冬最初の更新。
- (2015年11月9日)2015年度秋冬最初の更新。
- (2016年4月8日)2016年春夏最初の更新。
この記事へのコメント
いけぼう
バタクの中寺オーナーはいつもダブルをお召しですよ。
紺のジャケットに紺のタイを締めていて、シックな装いです。
blackwatch
そうですね。あの方はいつもビシッとキメていらっしゃいますよね。そういえば、私はスーツの採寸をしていただいたこともあります。
http://blog.goo.ne.jp/airuchi/e/31b38ad7b8f8561779f3477eb9d687b8
http://www.boq.jp/special/2007/tailor/batak.html
http://trendy.nikkeibp.co.jp/lc/fashiontrend/070320_tailor/
oki
blackwatch
実際に見ていないのでなんともいえないのですが、オレンジパンツに合わせているのが面白いですね。紺ジャケの懐が深さが分かります。
それにしても、徐々にダブルブレスト人気が広まっているなぁと。
一葉
今年はダブルの紺ジャケに挑戦してみたい!と思っていたのでとてもありがたいです。
スナップ写真とボタンの掛け方を確認しにこのページに何回も来ると思います。
ボタンと掛け方たくさんあるのですね。
もう少し季節が進んで、夏の着こなしが気になります。
ショーツとの相性はどうなのでしょう?
blackwatch
ショーツとの相性ですが、シングルブレストのジャケットと特に変わりはないと思います。カジュアル寄りの雰囲気のジャケットのほうが合わせやすいでしょうが、それもシングルブレストと同様です。
ふくらはぎ
女性の服装選びはシルエットが重要だと思うので、女性誌もたまに見たりするのですが、
今月号のUS VOUGEでのラルフローレン広告がショート丈のダブルで格好良かったです。
それはさておき、ちょっと乱暴ですが、
冬場のアウターでPコートが定番となり、着方としては一番上のボタンまで留めないのが主流、
とくれば、ダブルの下地は十分できてるんでしょうね。
ラペルが広くなれば、頭の大きさをごまかかす効果も期待できますし。
個人的には、ダブルの裾丈は腰より上が望ましいです。
(古いというか、子供っぽくなるのですが)
blackwatch
仰るとおりピーコートみたいなものだと思えば、ダブルブレストジャケットの着こなしは難しくないのでしょう。といいますか、実際に難しくないと思いますよ。
ダブルブレストジャケットの着丈は、シングルよりもちょっと短めくらいのほうが、バランスが取りやすいことが多いようです。