今日は、ダッフルコートを取り上げます。いろいろなブランドのものを集めてみました。《最終更新日: 2019年12月12日》
ダッフルコートとは
ダッフルコートは、もともとは北欧の漁師の仕事着だったそう。手袋をしたままでもボタンの留め外しができるトグル(トッグル、木製のボタン)が評価されたのか、第二次世界大戦ではイギリス海軍が軍服として採用しました。
ダッフルコートといえば、イギリスのモンゴメリー(モントゴメリー)将軍。ドイツの名将ロンメル将軍を討ち破ったことで名高い人ですが、しばしばキャメル色のダッフルコートを着ていたことで、ダッフルコートを世に知らしめました。
ダッフルコートの仕様、生地、トグル(トッグル)
ダッフルコートは、大きく以下の3種類に分けられるようです。実際の商品には、要素を混ぜたものも多いのですが。
- イギリス海軍系(?)
イギリス海軍で採用された様式で、元祖的なダッフルコート。メルトン系の分厚いウール(羊毛)地で、木製の浮きのトグルと麻のロープという仕様。
- トラッド系(?)
戦後に街着向けとして開発されたダッフルコート。ダブルフェイス(両面仕上げ)仕立てのウール地で、しばしば裏地はチェック柄。水牛の角(ホーン)のトグルと皮革(レザー)製のロープという仕様。
- フランス系(?)
フランスブランドに多い様式で、もちろん街着向け。ヘリンボーン柄のパイル織りのウール地で、とにかく大人っぽく高級感あり。水牛の角のトグルと皮革製のロープ仕様。
襟付きのダッフルコートもあるのですが、これの起源はよく分かりません。けっこう昔からあるようです。
ダッフルコートといえば、『mono(モノ)スペシャル Workwear(ワークウェア)No.2』の特集が素晴らしかったですね。ダッフルコート好きの方なら必見でしょう。『ザ・コートスタイル』もオススメ。
服飾評論家の出石尚三さんのダッフルコートについてのコラムや、(英語ですけど)ウンチクについてはこちら。
- 第426回 ドレッシーに着こなしたいダッフル・コート - ハイハイQさんQさんデス-男はカッコ
- Duffle Coat History, Details & Buying Guide - Gentleman's Gazette
ダッフルコートについての古い写真や資料が、こちらの記事で読めます。
ダッフルコートの着こなし
ダッフルコートは、Pコート(ピーコート)と並ぶ冬のカジュアルウールアウターウェアの代表格。スリムなPコートとは違い、テーラードジャケットの上に羽織ってもすんなりハマってくれるのがうれしい。実際、ネイビーブレザーの上に羽織る着こなしは、アメトラ(アメリカン・トラッド)では一般的な着こなしといえます。
ダッフルらしいダッフルはゆったりしたシルエットをしていますので、パンツもある程度太さのあるもののほうが合わせやすいでしょう。靴もガッチリしているもののほうがバランスが取りやすいといえます。まあこのへんは流行次第ですが。
もちろん『絵本アイビーボーイ図鑑』にも登場していまして、タートルネックセーターとコットンパンツ(かな?)、それにデザートブーツらしきものに合わせて着こなしていますよ。
そうそう、『絵本アイビーボーイ図鑑』の著者である穂積和夫さん自身も、ダッフルコートを着こなしていらっしゃいます。オトナのダッフルコートの着こなしは、かくありたい?
着こなし例いろいろ
こちらは、紺ブレ、フェアアイルセーター、ボストン眼鏡に合わせた、プレッピーのお手本のようなダッフルコートの着こなし。
こちらは、ツイードのスーツに合わせた大人っぽい着こなし。
こういう何気ないダッフルコートの着こなしも素敵です。帽子、マフラー、手袋、そしてヒゲ……。
こちらは、ケーブル編みのタートルネック(タートル)セーターに合わせた着こなし。
こちらは、1着のダッフルコートを5とおりに着まわし。
こちらの記事には、元ポパイ(Popeye)編集長の木下孝浩氏の着こなしがいろいろあります。
最後は、信濃屋の白井俊夫氏の着こなし。さすが貫禄があります。
着こなし方のひとつの考え方
ファッションエディターの山下英介氏によるダッフルコートの着こなし方をご紹介。異論はあるでしょうが、ひとつの考え方として面白いと思いました。
抜粋すると、こんな感じ。
- 「ダッフルコート。それは文科系男子と女子だけに許された “聖域”」「オラオラ系ファッションカルチャーとは隔絶したところがダッフルコートの魅力」
- メルトン地なら「安パイならキャメル、もっと上を行くならオレンジやレッドといった明るい色目」「ダークカラーのダッフルならヘリンボーンやカシミアといったリッチな素材から選ぶ」
- 合わせるパンツは「ホワイトジーンズが鉄板」「これ以外では、タータンチェックのウールスラックスあたりが狙いめ」
- 「ブルージーンズは、1. こだわりのヴィンテージデニム、2. 合わせるダッフルがオレンジか赤、上記どちらかの条件を満たしていない場合は避けた方が無難」
- 「ぽってりとした革靴がバランス良好。グッチのビットモカシンも洒落てます」「ロングノーズの艶っぽい靴とは見事なまでに似合わない」
- インナーは「ローゲージのニット」「ちょっと色味の派手なもの」
着こなし例、映画編
映画『第三の男』では、イギリス軍人役のトレヴァー・ハワードの本場イギリス海軍のダッフルコート姿を見られます。ベレー帽に合わせて。
- Joseph Cotten Orson Welles Trevor Howard the Third Man 8x10 Photo #E3507 at Amazon's Entertainment Collectibles Store
- The Trad: WW II Duffle Coat
- YouTube - The Third Man (trailer)
映画『ナヴァロンの要塞』では、グレゴリー・ペックとデヴィッド・ニーヴンのダッフルコート姿が見られます。やはりイギリス軍人役です。でも予告編にはその場面は出てこないなぁ。
- Gregory Peck’s Duffel Coat in The Guns of Navarone | BAMF Style
- YouTube - The Guns of Navarone (trailer)
映画『怒りの海』では、イギリスの戦艦の乗組員たちがダッフルコートを着て奮闘しています。
街着としては、映画『愛の狩人』にて大学生役のジャック・ニコルソンとアート・ガーファンクルのダッフルコート姿が見られます。襟付きのダッフルコートを着ているもよう。
- 「Jack Nicholson Art Garfunkel」のエディトリアルストック写真 - ストック画像 | Shutterstock
- YouTube - Carnal Knowledge (trailer)
映画『ロシア・ハウス』では、ショーン・コネリーのダッフルコート姿が見られます。テーラードジャケットとネクタイに合わせて。
映画『恋人よ帰れ!わが胸に』では、ジャック・レモンのダッフルコート姿が見られます。
Gloverall(グローバーオール、グロヴァオール、グローヴァーオール)
ダッフルコートの代名詞(?)グローバーオール(グローヴァーオール、グロヴァオール、グロバーオール、グロヴァーオール、Gloverall)は、イギリスのアウターウェアブランド。
とにかく、ダッフルコートといえばこのブランドは絶対に絶対に外せません。大きく分類して3型ありまして、いずれも名品。別記事にて大きく取り上げています。
Brooks Brothers(ブルックス・ブラザーズ)
ブルックス・ブラザーズ(Brooks Brothers)を別記事で大きく取り上げていますが、アメトラ(アメリカン・トラッド)の雄のブルックス・ブラザーズには各種ウールアウターも充実しています。
「ウール ダブルフェイス ダッフルコート」は、厚手のダブルフェイス仕様のウール100%地を使った襟付きのダッフルコート。大人も安心して着られるダッフルコートとして、これはかなり狙い目だと思いますよ。フードは着脱可能で、ジッパーフロント仕様。かなり温かいでしょう。裏地はブラックウォッチ柄。
そうそう、セール(クリアランス、Clearance)になっているコートがあるかもしれませんので、そちらも見てみてください(別ページにあります)。なおブルックス・ブラザーズ・オンラインショップでは、商品到着後8日以内なら未着用の場合に限り返品・交換が可能です。
J. Press(J・プレス)
J・プレス(J. Press)は、1902年創業のアメリカはコネチカット州のアメトラブランド。ブルックス・ブラザーズは良くも悪くも国際的なブランドといえますが、J・プレスはアメトラどっぷり(?)という印象があります。
「CUBABEACH トリプルパイル ダッフルコート」は、日本毛織(ニッケ)のキューバビーチという生地に使われるウールを使用した定番ダッフルコート。J・プレスの古いカタログを基にデザインされたとのこと。ダッフルコートらしいダッフルコートといえます。日本製。
「バックブロックチェックメルトンダッフルコート」は、裏地にブロックチェックを使用したメルトン地のダッフルコート。生地も裏地もこちらのほうがカジュアルな仕上がりといえるでしょう。
Auralee(オーラリー)
オーラリー(Auralee)は、2015年に誕生した日本のカジュアルウェアブランド。デザイナーの岩井良太氏はフィルメランジェ(フィル・メランジェ、FilMelange、Fil Melange)やノリコイケ(Norikoike)に携わっていたそうで、コンサバだけど遊び心のあるフレンチ寄りのブランドとして期待できそうです。
毎年ダッフルコートをつくっているオーラリーですが、今季はトグルなしが出ました。「ウールシルクメルトンダッフルコート」は、ウールとシルク(絹)混紡の高級感のあるメルトン地のダッフルコート。ミニマルなダッフルコートをお探しならこういうのもあります。日本製。
他の記事も……
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追記
- (2006年11月20日)商品を追加。
- (2007年11月18日)2007年度秋冬最初の更新。
- (2008年11月9日)2008年度秋冬最初の更新。
- (2009年11月21日)2009年度秋冬最初の更新。
- (2010年11月24日)2010年度秋冬最初の更新。
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- (2019年12月12日)2019年度秋冬最初の更新。
この記事へのコメント
ブラックスーツ
blackwatch
ダッフルは、似合う似合わないがあるかな。もっとも、これはダッフルに限らないのですけど。
ダッフルを、大人のコートとしてぜひ復活させたいものです。
クラコフ
実は今期購入予定です。色々物色中ですがやはりダッフルの安物はあまりよろしくない物が多いですね。かといって優良ブランドは高いので古着でグローバーオールなんかを探していますがなかなか良いものにめぐり合えない状況です。
そういえば某オンラインショップでフィデリティのダッフルコートが売られていて比較的お値段控えめだったんですがここのダッフルってどうなんでしょ?以前こちらのブログで紹介されてましたがなぜか記事が表示できないもので・・(パソコンの調子が悪いのかも)
しかしこの間のピーコートといいデザートブーツといい今年は驚くほどワードロープが充実してる気がします。確実にこちらのブログの影響ですね(笑)もちろん良い影響としてですけど
グレナカート
バレナのダッフルコート、ぜひ×2来期はネイビーを出して下さい(涙)。スタンダードな色を買いたいんです。
個人的には、全体のデザインバランスはこれ以上無い位に好きです。今期はダッフル我慢します。。
blackwatch
Fidelityのページ、今は見られますよね? 変なエラーが出たら、とりあえず何回か再読み込み(「F5」もしくは「Ctrl+F5」)してみてください。
Fidelityのダッフルは、Pコートのノリで作られているような印象があります(Gloverallはその逆)。良くも悪くも、若々しくカジュアルな感じ。あとは好みですね。
グレナカートさん、こんにちは。
ああ確かに、ネイビーがあってもいいですよね。業界の人、見てますか?(笑)
ダッフラー
ダッフルコートは発祥の国イギリスでも着られているんですかね?
blackwatch
大流行はしていないでしょうが、イギリスでもたまには着ている人がいるのではないかと。そういう質問を思いつかれた背景が気になります。
シュガーレス
ダッフルコート、欲しいな、今季買おうかなとは思っているんですが、重さが気になってます。
ウール100%で丈がショートでないものは、重くてずっと着ていると肩がこってくるという話を聞くもので。たまに肩がこる者としては、う~ん、悩ましい。
blackwatch
重いとか肩が凝るとかは個人差があるでしょう。その人の体力や体質次第です。特に若い人でしたら問題ないと思いますけどねぇ。
ちなみにアラフォーの私も10年くらい前はよくダッフルコートを着ていましたが、特に何も問題なかったですよ。私は痩せていて、体力の「なさ」には自信(?)があるのですが。ただ、いまはさらに体力が落ちてしまいましたので、いま着るとどう感じるかはよく分かりません……。
シュガーレス
返事をありがとうございます。
そうですか。「ダッフルコート欲しいけど、買っても重くてあんまり着ないんじゃないかな」というのを物欲を抑える理由にしてましたが(笑)、いい物があったら財布と相談してみます。
blackwatch
もちろん、ダウンジャケットなどに比べると重いですよ。ああいうものしか着ていなければ重く感じることでしょう。
昔は、「温かい服=重い服」だったのです。革ジャンしかり。
シュガーレス
「寒さに耐えるのは、重さに耐えること」なんて言われたりもしますし「重衣料」ですものね。
僕はダウンもよく着ますし、キルティングジャケットや、表地はウール100%でも防風などの機能素材を使って薄く軽くしたコートなどを着ることも多いので、着はじめは重く感じるかもしれませんね。ここ数年厚手のウールのアウターだとPコートぐらいしか着てませんし。
ただ体力は割と自信がある方なので、慣れれば気にならなくなるかなと、ブラックウォッチさんの話を聞いて思いました。ダッフルコートも今はキルティングやニットの物もありますが、僕は「いかにも」という感じのダッフルが好きですね。
blackwatch
軽いコートは、爺さんになってからいくらでも着る機会があることでしょう。体力があるうちは、積極的に重いコートを着てもいいのかもしれませんね。靴もしかり。
フィッシャーマン
丁度先日リサイクル店を廻ってネイビーのダッフルを買ったところでした。旧VANを探していたところ、偶然にマクベスの着用感のまったく無いダブルフェイスの膝丈くらいのダッフルを見つけて「うわー」となってしまいました。一緒に旧マクベスのレタードカーディガンも発見してこちらも飛びつきました(どちらも1000円でお釣りがきました)。リサイクル店は作りのいい時代の服がまだ眠ってますね。
ほかの記事もこれからの記事も楽しみにしています、おじゃましました。
blackwatch
マクベスの状態の良いダッフルコートですと、ヤフオクあたりならもっと高値で扱われていそうです。そう思ってヤフオクを実際に見てみますと、5,000円くらいでしょうか。もうちょっと高いのかと思いましたが、若い人は知らないブランドでしょうから値が上がりにくいのかもしれません。
いずれにせよ、かなりお得だったのは間違いないですね。
私は最近服をたくさん断捨離したのですが、処分する服も「売り方」次第で値段が大きく変わることを実感しました。
ダース
始めてコメントさせて頂きます。
所謂ビジネススーツなどにダッフルコートを合わせるのは不自然でしょうか?
ほとんど見かけない気がします。
blackwatch
90年代(1990年代)くらいまでは、ビジネススーツにダッフルコートという格好をたまには見かけました。タブーではないです。ただ、無難でもありません。安易にはおススメしません。
フレンチ風のスーツの着こなしにすると、比較的まとまりやすいような気がします。といっても、具体的にどんな着こなしかといわれると説明が難しいのですが、あまり堅苦しくない格好とはいえるでしょう。例えば、シャツを白無地以外にするとか。
ダッフルコートについては、ヘリンボーンウール地でホーン(水牛の角)のトグル仕様のものが合わせやすいと思います。