今日は、チェスターフィールドコート(チェスターコート)を取り上げます。《最終更新日: 2019年12月19日》
チェスターフィールドコートとは(チェスターコートとは)
チェスターフィールドコートは、最も格式の高いコートのひとつ。冠婚葬祭(フォーマル)にはできればこれを着たいところです。
デザインは、ざっくり言うとテーラードジャケットの丈を長く伸ばした感じ。生地は基本はウールです。テーラードジャケットと同じくシングルブレスト(シングル前)とダブルブレスト(ダブル前)があります(シングルが多い)。
チェスターフィールドコートの仕様
正式なチェスターフィールドコートは、前を閉じるとボタンの見えない比翼仕立て(フライフロント)になっていますが、カジュアル寄りのものは打ち抜きになっているものもあります(最近はこちらが多い)。
本当は上襟に黒いビロード(ベルベット)地が付いているものが正式で、付いていないものをセミチェスターフィールドコートという説もありますが、近年はビロードが付いているものは珍しくなりました(なので、いちいち「セミ」を付けることはほとんどない)。
ウール地のオーバーコートいろいろ
参考までに、チェスターフィールドコートに似たウール地のオーバーコートを以下に挙げてみます。ただ、コートの仕様の微妙な違いは私もよく分かりませんので、話半分で読んでください……。
- アルスターコート(ulster coat)
アルスターカラーというトレンチコートのような大きく立体感のある襟が付いたコート(ケープの付いたコートを指す場合もあるようですが)。基本的にはダブルブレストで袖はカフス(折り返し)仕様、(バック)ベルトが付いていることも。ふつうのチェスターよりもカジュアルな雰囲気といえるでしょう。
- ブリティッシュウォーム(british warm)、グレートコート(greatcoat)
元は軍人用のダブルブレスト仕様のコートで、大きな特徴は肩章(エポレット)が付いていること。昔の軍人さんが着ているドレス寄りのウールコートは、こんな感じのものが多いですよね。
グレートコートも、似たような軍用のコートを指すようです。
- カバートコート(covert coat)
元は狩猟用のコートで、生地にカバートクロス(カルゼ)という綾織りのウールを使用しているのが特徴。デザインはシングルブレストのチェスターフィールドコートとほぼ同じですが(上襟もビロード仕様)、袖先と裾に4本線のステッチが入っています。カントリー系のコートらしく、色はブラウン系が主。
- ポロコート(polo coat)
アルスターコートに似たダブルブレストのコートで、ポロ競技観戦用にアメリカで生まれたコート。フレームドパッチポケット、背中のバックベルト、カフス(折り返し)付きの袖といった特徴があります。キャメルヘア地のキャメル色が最も基本的な色ですが、そのほかの色も。
アメリカ生まれということもあり、アメトラとの相性は抜群。ダブルブレストですが、ちょっとカジュアル寄りの雰囲気があります。
- ローデンコート(loden coat)
フローティングショルダーという独特の肩を持つオーストリアはチロル地方の伝統的なハンティングコートで、分厚いウール地であるローデンクロスを使用しています。とても個性的なのですが、これはこれでクラシックなコートなのです。
ところで、そもそもコートのことはオーバーコート(overcoat)と呼ぶのが正式なのです(昔は日本でも「オーバー」と呼んでいましたよね)。今のジャケット(jacket)に相当するものを、昔は(英米では)コート(coat)と呼んでいました。
そもそも昔のジャケットに相当するのものは、モーニングコート(morning coat)やテールコート(tailcoat)のように着丈が長かったのです。今でもスポーツコート(sportcoat)(テーラードジャケットのこと)やウエストコート(waistcoat)(ベストのこと)の名前に、その名残が残っています。
着こなしいろいろ
こちらは、ジーンズとブーツに合わせたカジュアルな着こなし。
チェスターフィールドコートにも、着丈が短めのものがあります。
キャメル色のコートも素敵です。
- Madison Ave., New York City | The Sartorialist
- On the Street….Camel Coats, Florence p.1 - The Sartorialist (Wayback Machine)
- Day Four: The Style Guy: The GQ Eye: GQ
Gジャン(ジージャン)との重ね着もアリです。
こんなふうに、スニーカーと合わせる着こなし方もあります。
- Coats aren't formal only // men's fashion blog
- GREY HERRINGBONE COAT // men's fashion blog
- On the Street….Tenth Ave., New York - The Sartorialist (Wayback Machine)
チェスターフィールド系のコートでも、ラグランスリーブ(ラグラン袖)仕様のものがあります。堅苦しくならないのが特徴。ちなみにこの人はポール・ウェラーですね。ロールアップしたジーンズ、タッセルローファー、スクールマフラーという着こなし。
チェスターフィールド系のコートのカジュアルな着こなしいろいろ。
Brooks Brothers(ブルックス・ブラザーズ)
ブルックス・ブラザーズ(Brooks Brothers)を別記事で大きく取り上げていますが、アメトラ(アメリカン・トラッド)の雄のブルックス・ブラザーズにはアウター類も充実しています。
「ウールフランネル チェスターフィールドコート」は、比翼ボタン仕立てでまさに正統派のチェスターフィールドコート。ビジネスに冠婚葬祭に文句なく活躍してくれます。生地は暖かみのあるウールフランネル。
「キャメルヘア シングル ポロコート」は、イタリアはトレーニョ(Tollegno)社のキャメルヘア地のポロコート。やはりキャメル色のコートといえばこの生地です。ポロコートといっても仕様が簡略化されたシングルブレストで、すっきり着られます。アメリカ製。
「ウール/カシミヤ グレンプラッド ダブル8釦コート」は、渋いグレンチェック(グレナカートチェック)柄のウールカシミア地を使用したダブルブレストコート。高級感と大人の貫録を感じさせてくれる仕上がりです。イタリア製。
「ウール/ナイロンブレンド ダブルフェイス ダブル10釦コート」は、ミリタリー風のデザインのダブルブレストコート。カジュアルスタイルにもよく合いますね。60年代(1960年代)もしくは70年代(1970年代)という雰囲気を感じます。メタルボタン仕様。
カジュアルラインであるレッド・フリース(Red Fleece)にもチェスターフィールドコートがありまして、「ウールブレンド メルトン プラッド シングル3釦コート」は大胆なチェック柄が印象的。アンコン仕立ての軽い仕上がりです。
そうそう、セール(クリアランス、Clearance)になっている商品があるかもしれませんので、そちらも見てみてください(別ページにあります)。なおブルックス・ブラザーズ・オンラインショップでは、商品到着後8日以内なら未着用の場合に限り返品・交換が可能です。
Hand Room(ハンド・ルーム)
ハンド・ルーム(Hand Room)は、2016年に誕生した日本のカジュアルウェアブランド。当ブログでも以前取り上げていた往年の名ブランドであるタブロイド・ニュース(Tabloid News)の元デザイナーが立ち上げたブランドなのです。
「ヤクビーバーアルスターコート」は、ウールとヤクなどの混紡メルトン地を使用したアルスターコート。アルスターコートといっても着丈短めでメルトン地なので、大人っぽいピーコートという感覚で着こなせるのでは。裏側の処理は凝っています。日本製。
Auralee(オーラリー)
オーラリー(Auralee)は、2015年に誕生した日本のカジュアルウェアブランド。デザイナーの岩井良太氏はフィルメランジェ(フィル・メランジェ、FilMelange、Fil Melange)やノリコイケ(Norikoike)に携わっていたそうで、コンサバだけど遊び心のあるフレンチ寄りのブランドとして期待できそうです。
「カシミアウールモッサーチェスターフィールドコート」は、ラグランスリーブ(ラグラン袖)仕様のチェスターフィールドコート。むかしからこの仕様のコートはけっこうつくられていまして、堅苦しくならないのが特徴です。
生地は高級感があって暖かみのあるウールカシミア。ステッチの目立つカジュアルなつくりにも注目してください。日本製。
Lardini(ラルディーニ)
近年新メンバーを加えいまっぽくなったのラルディーニ(Lardini)は、1978年創業のイタリアブランド。
パッドや芯といった副資材を極力省いたアンコン仕様のジャケットは、簡単にいまっぽく着こなせること請け合い。ラペル(下襟)のコサージュが目印です。チェスターフィールドコートもつくっていまして、同様に軽い仕立てなのです。かなり充実しています。
Mackintosh(マッキントッシュ)
ゴム引きコートでおなじみのマッキントッシュ(Mackintosh)は、1823年創業のイギリス(スコットランド)のレインウェアブランド。
現在、最も格好良いコートをつくってくれているブランドのひとつといってよいでしょう。
カーコート(ドライビングコート)、ウォーキングコート
その名のとおり車を運転するときや歩くときに着るコートが、カーコート(ドライビングコート)やウォーキングコートです。
デザインはさまざまですが、ダブルブレストのチェスターフィールドコートっぽいものもあります。着丈は短め。
トレンチコート、バルマカーンコート(バルカラーコート、ステンカラーコート)
その他、当ブログでは紳士用のコートをいろいろ取り上げています。
トレンチコートは実はもともとはミリタリーコートとして有名になったのですが、今ではハードボイルドな紳士用コートとして確固たる地位を築いています。クラシックに着こなして欲しいですね。
トレンチコートと並ぶ紳士用コートの定番であるバルマカーンコート(バルカラーコート、ステンカラーコート)は、トラッドファンなら一着は持っておきたいコート。スーツに合わせるのはもちろん、カジュアルスタイルにも合わせやすいはずです。
他の記事も……
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- ステンカラーコート(バルマカーンコート)を集めてみました
- トレンチコートを集めてみました
- キルティングジャケット、キルティングベストを集めてみました
- Pコート(ピーコート)を集めてみました
- ダウンジャケット、ダウンベストを集めてみました
追記
- (2006年11月24日)商品を追加、入れ替え。
- (2007年12月1日)2007年度秋冬最初の更新。
- (2008年4月18日)2008年春夏最初の更新。
- (2008年12月20日)2008年度秋冬最初の更新。
- (2010年1月8日)2009年度秋冬最初の更新。
- (2010年12月2日)2010年度秋冬最初の更新。
- (2011年12月11日)2011年度秋冬最初の更新。
- (2012年11月22日)2012年度秋冬最初の更新。
- (2013年11月27日)2013年度秋冬最初の更新。
- (2014年12月16日)2014年度秋冬最初の更新。
- (2015年11月20日)2015年度秋冬最初の更新。
- (2016年11月1日)2016年度秋冬最初の更新。
- (2017年11月24日)2017年度秋冬最初の更新。
- (2018年12月3日)2018年度秋冬最初の更新。
- (2019年12月19日)2019年度秋冬最初の更新。
この記事へのコメント
kerorin2
さすがにいいものは、カチッとしてえますね!
自分もウールのチェスターコート1着持ってますが、安物なんでこんなにカチッとしてないし、上等にも見えません。
安ものでも、高級に見える風格を備えたいものです。
ところで、スーツの袖丈のジャストについて知りたいです。スーツの袖丈は正式にはシャツが見えるくらいなんでしょうか?普通のつるしのスーツって袖が長いですよね?
blackwatch
チェスターは、安物だとシンドイですね(汗)。安いのを選ぶのであれば、真っ向勝負を避けて(?)、ナイロン系の化繊のもののほうがいいのかも。
スーツの袖丈ですが、仰るとおりシャツが見えるくらいの長さが基本。クラシックなビジネススーツなら、絶対の法則です(モード系スーツならこの限りではない)。
既製のものは長めにできていますが、これは袖を直すことを前提にしているから。ジャケットの袖は、短くするのはナンボでもできますが(あらかじめ本切羽になっているものはともかく)、長くするのは長さの限界がありますから。
安売り店においては、店員が袖丈について無頓着のことが多いでしょうが、これは店員が面倒臭かったり、知識不足だったりするからでしょう。
この辺の基本ルールについても、きちんと記事で書くべきなのかなぁ、と思いました。
ブラックスーツ
blackwatch
ミシン跡は、ウール素材のジャケットならそんなには目立たなかった記憶がありますが、どうだったかな? スーパー150みたいな繊細な生地だと、跡が残りやすいかもしれません。
ちなみにコットン素材だと、ミシン跡もそうですが、袖を出すのも苦しいと思います(跡が残るので)。
最近は、吊るしの状態だと袖ボタンをつけていないものもありますね。袖丈を決定した後、ボタンをつけることを前提にしていると。こういうお店がもっと増えるといいのに。
ブラックスーツ
薄い生地ですと、遠目から見た限りではさほどではありませんが、目の前で見ると結構分かります。(気にする人には我慢出来ないかも)
服に限った話ではありませんが、販売員の教育も含め、もっと顧客の事を考えて商売して貰いたいものですね。
blackwatch
いっそのこと水洗いしてしまえば跡が消えそうな気もしますが、それはそれで難しいですね(汗)。
安売りの店でサービスが悪いのは、ある意味仕方がないでしょう(サービスも値段のうち)。でも、高い店でサービスが悪かったら、「ムッキー!」です。
TS
突然ですが、クロンビーコートとというのはチェスターフィールドコートとは違うのでしょうか?
http://www.bluedun-outdoor.com/crombie_coat_slim_fit.html
チェスターを物色中に上記リンクにあるコートを発見し、そこの説明によると
なにやらチェスターフィールドコートの源流らしきモノらしいのです。
形はチェスターに酷似しているのですが、名前が違うので気になりました。
blackwatch
Crombieというブランドがありまして、もともとは生地をつくっていて、その後オーバーコートもつくるようになったようです。かなりの名門ブランドだったと思われます。
Crombieが本当に源流だったのかは分かりませんが、Crombieがチェスターフィールド型のコートの定着に大きく貢献したことは確かなのでしょう。
そういうわけで、(シングル)チェスターフィールド型のコートをクロンビーコートと呼ぶようになったのだと思います。細かな仕様の決まりごととかはなさそうで、だいたいああいう形ならきっとOK(?)。
クロンビーコートは “Gentleman” という本にも紹介されていまして、実は上の記事でも言及しようと考えていたのですが、正確なことが分からなくて見送った経緯があります。
http://blackwatch.seesaa.net/article/5011396.html
大学生
いままでロングコートは背伸びしすぎ、オッサンぽい等と思われるのではないかと敬遠していたのですが
ちょっと前に大学でもチェスターコートなどが流行っていたことと
いろいろあって(主に体力面で)自分はもう言うほど若くないんだなと実感してしまったこともあり
今年はロングコートに挑戦してみようと思いました
そこでなのですが、ポロコートのようなダブルボタンのコートのほうがどちらかというとカジュアルに向いてそうだと思ったのですが
それは気のせいでしょうか?
また、こういう仕様のチェスターをカジュアルで着ていたら少し変だっていうのがありましたら教えて下さい
blackwatch
カジュアルといってもいろいろありますので、なんとも言いがたいですね。グレーウールパンツにドレスシューズというカジュアルもありますし、色落ちしたジーンズにスニーカーというカジュアルもあります。
確かにポロコートは少しカジュアルにはなるかもしれませんが、一般にダブルブレストのチェスターフィールドコートのほうがカジュアルとはいえないと考えます。
分かりやすいカジュアルさの指標は、生地でしょう。厚手のメルトンウールとかツイード、もしくは派手めのチェック柄あたりだとカジュアルっぽいですね。もちろんそういう生地でないとカジュアルに合わせられないわけではないのですけど。
あとは、肩パッドや芯がどのくらい入っているか。今の時代はパッドや芯があまり入っていないほうが(特にカジュアル用途だと)着こなしやすいのは確かです(といいますか今店頭に並んでいるのはたいていそういうヤツのはず)。ただ、このへんは流行次第です。
近年は若い人もかなりカジュアルな格好にチェスターフィールド系のコートをよく合わせているじゃないですか。若者向けのセレクトショップで扱っているチェスターフィールドコートなら、たいていカジュアルに着やすいのではないでしょうか。
大学生
スーツ用のジャケットとカジュアルに着られるジャケットも厚さを見れば人目で見分けつきますし…
ちょうどツイード素材が気になっていたところなのでこの冬はそんなコートを探してみようと思います
ありがとうございました!
blackwatch
ダブルブレストも、例えばピーコートに近いようなデザインであれば当然カジュアルっぽいですね。
というわけで、お気に入りを見つけてください。