今日は、モンクストラップシューズ(靴、革靴)を取り上げます。ダブルモンクストラップもありますよ。《最終更新日: 2017年4月30日》
モンクストラップとは
モンクストラップとは、靴ヒモではなくベルト(ストラップ)とバックルで甲を締めて固定する靴のこと。キリスト教の修道士("monk")が履いていた靴が、この靴の起源とのこと。
トウ(爪先)のデザインはプレーントウ(プレーントゥ)型になっているものが基本ですが、ストレートチップ(キャップトウ)型やウイングチップ(フルブローグ)型などもあります。また、ブーツ型も。
- 求道、個性、モンクストラップ その1 - [靴]All About
- Monk Strap Shoes & Double Monks Guide - Gentleman's Gazette
- 「モンク・シューズの研究」ヴァンプの美しさにかかっている - 出石尚三 紳士服飾研究 - 朝日新聞デジタル&M
いろいろな着こなしに合うモンクストラップ
モンクストラップはさまざまな着こなしに合わせることができまして、もしかすると一番着こなしの幅が広い革靴なのかもしれません。
まず、ヒモ靴ではない靴としては例外的に、ビジネススーツに合わせられます(フォーマルにはちょっと難しいですが)。ブリティッシュスーツにも合いますし、アメトラ(アメリカン・トラッド)スーツとの相性も悪くありません。こちらは、スティーブ・マックイーンのスーツ姿。
もちろんカジュアルにも使えまして、ジーンズ(ジーパン)と合わせてもなんら違和感はありません。
万能な靴としてはいろいろな靴が挙がりますが、モンクストラップは「高いレベル」でその要件を満たしていると思います。
ダブルモンクストラップ(ダブルモンクとは)、サイドモンク(サイドストラップとは)
ダブルモンクストラップ(ダブルモンク)とは、名前のとおりストラップが2本あるモンクストラップのこと。イギリスのウィンザー公(エドワード8世)がロンドンのジョン・ロブ(John Lobb)に注文した靴が、その起源とのこと。
普通のモンクに比べて、より華やかな(派手な)雰囲気になるといえるでしょう。ストレートチップ型のデザインが基本です。ちなみにダブルモンクに対して普通のモンクのことを、シングルモンクと呼んだりもします。
変り種モンクとしては、サイドモンクストラップ(サイドストラップ)もあり。バックルが横に回り込んだデザインなのが特徴で、ドレス度の高い雰囲気になります。英語では “cutaway monk strap”(カッタウェイ・モンクストラップ)とも呼ぶようです。
ストラップ(ベルト)を外して脱ぎ履きするのか?
モンクストラップを脱ぎ履きするときに悩むのが、ストラップ(ベルト)を都度外す必要があるのかということ。
実はモンクストラップには、「(主にストラップ部分に)ゴムが仕込んであるもの」と「ゴムが仕込んでないもの」の2種類があります。
ゴムがあるものは、ストラップを外さなくても脱ぎ履きできます(この仕様のものが多いはず)。ゴムのないものは、ストラップを都度外すことになるのでしょう。
ちなみにストラップを留める穴の位置ですが、(腰のベルトと同じように)本当は真ん中の穴で留めるのが一番見た目は良いのでしょうね。でも、なかなかそういうわけには……。フィット感を優先すべきだと私は思います。
Regal(リーガル)2321
今の日本を代表する靴ブランドであることは間違いないであろうリーガル(Regal)は、アメリカのブラウン(Brown Shoe)社を母体に日本製靴が1961年に国内ライセンス生産を開始したのが始まりです。
2321は、リーガルのグッドイヤーウェルト製法による定番モンクストラップ。大きなバックルが男らしいですね。
Paraboot(パラブーツ)のWilliam(ウィリアム)
質実剛健ながら上品な顔立ちの靴で定評あるパラブーツ(Paraboot)は、1919年創業のフランスの靴ブランド。
ダブルモンクのWilliam(ウィリアム)は、自社生産のゴム底(ラバーソール)であるラテックスソールを頑強な製法であるノルウィージャン(ノルヴェジアン)製法で仕上げた、このブランドらしい逸品。パラブーツの代表作のひとつです。
Shetlandfox(Shetland Fox、シェットランドフォックス)
シェットランドフォックス(Shetlandfox、Shetland Fox)は、おなじみリーガルコーポレーション(Regal Corporation)の一ブランド。1982年に登場し一時消滅していましたが、2009年に復活しました。リーガルの上級ブランドといえます。
Inverness(インバネス)は、2009年に登場したシェットランドフォックスの主力ライン。まさに定番的なクラシックなラウンドトウの木型を採用しています。3032はシングルモンクストラップで、強いて言えば若干バックルが現代的なのが特徴でしょうか。グッドイヤーウェルト製法で革底仕様。日本製。
Birmingham(バーミンガム)は、Invernessよりもノーズが長めのセミスクエアの木型を採用した2016年に登場したライン。043は、レベルソという縫い目を隠す技術でキャップトウを表現しているのが特徴のダブルモンクストラップ。上品な仕上がりといえます。グッドイヤーウェルト製法で革底仕様。日本製。
Brooks Brothers(ブルックス・ブラザーズ)
ブルックス・ブラザーズ(Brooks Brothers)を別記事で大きく取り上げていますが、アメトラ(アメリカン・トラッド)の雄のブルックス・ブラザーズでは靴も扱っています。
ピール・アンド・カンパニー(Peal & Co.)はもともとはイギリスの靴ブランドでしたが、廃業をきっかけにブルックス・ブラザーズが買い取ったのです。今では、イギリス製の靴はこのブランド名でつくっていることが多いようです。
こちらは、ダブルモンクストラップ。イギリス製らしいまさに端正な雰囲気の仕上がりです。革底仕様でグッドイヤーウェルト製法。スエード地もあります。
そうそう、セール(クリアランス、Clearance)になっているコートがあるかもしれませんので、そちらも見てみてください(別ページにあります)。
Union Royal(ユニオン・ロイヤル)のUnion Imperial(ユニオン・インペリアル)
ユニオン・ロイヤル(Union Royal)は、1952年創業の日本の老舗靴メーカー。ユニオン・インペリアル(Union Imperial)は、ユニオン・ロイヤルの最高峰ラインです。
ユニオン・インペリアルの中でも特に注目なのが、手作業によりウェルトを縫い付けるハンドソーン・ウェルト製法(九分仕立て)を使用したライン。グッドイヤーウェルト製法の原型的な製法で、グッドイヤーウェルト製法特有の履き心地の固さがないのが利点です。手作業のすくい縫いは中国、出し縫い(これは機械でしょう)と仕上げは日本で行うことで、この値段を実現させているのだそうな。
U1706は、スマートなラウンドトウが美しいモンクストラップ。木型はS261の3Eで、ゴム底(ラバーソール)としてはドレッシーなダイナイトソール(Dainite Sole)を使用しています。
U1105は、革底仕様のモンクストラップ。セミスクエアトウの新木型S261を採用していることもあり、よりエレガントな仕上がりです。
Mark McNairy(マーク・マクナイリー)
マーク・マクナイリー(Mark McNairy)は、1971年生まれのアメリカのファッションデザイナー。ウォークオーバー(Walk-Over)やG・H・バス(G.H. Bass)などとのコラボも知られていて、アメトラブームの仕掛け人のひとりといえるかも。靴もつくっていまして、イギリス製のグッドイヤーウェルト製法。
9707は、ストームウェルト仕様でちょっとラギッドなダブルモンクストラップ。こちらは、シボ革が渋い9707で、少しだけゴツいリッジウェイソールを採用しています。アメリカ的なパラブーツ風の靴といえるかも。
「くつ家ともだ」のパーソナルオーダー(宮城興業)
どうしても既成靴では足が合わない方や、気に入った色のものがない人は、「くつ家ともだ」のパーソナルオーダーシステム、誂え靴「友郎(Tomorow)」はいかがでしょう。
甲革(アッパー)の色や素材、や靴底(ソール)の形式が選べるのはもちろんのこと、サイズもlength(足長)だけでなく、width(足囲、ワイズ)も選択できます。なんと、D、E、EE、EEE、EEEE、Fの、6種類! 注文するときにはサンプルシューズ(ゲージ靴)が送付されて試し履きができるので、通販でも安心です。
製法はもちろんグッドイヤーウェルト。デザインも非常に正統派で、長く愛用できること間違いなし!
ここのモンクストラップは、ES-24(「健」)、ES-33(「弘」)、ES-22(「里」)、ES-23(「恵」)、ES-16(「真」)、ES-20(「介」)の6種類。それぞれ、プレーントウ2種と、ストレートチップ、ウイングチップ、サイドモンク、ダブルモンクです。
チゼルトウのものもありますが、このブログとしてはラウンドトウのものをオススメしたい。値段については、パーソナルオーダー(パターンオーダー)にしてはたいへん良心的だと思います。
なおここのオーダーシューズは、宮城興業の工場でつくられています。靴好きには、結構有名なところです。
Cheaney(チーニー)
2009年についにチャーチから独立したチーニー(Cheaney)は、1886年創業のイギリスの靴ブランド。チャーチの創業家(今はチャーチから離れている)の人が買い取ったのだそうな。
グッドイヤーウェルト製法の真っ当な靴をたくさんつくっている老舗の名門です。
Jalan Sriwijaya(ジャラン・スリウァヤ)
イギリスのノーザンプトンにて本格靴の製造技術を習得したというジャラン・スリウァヤ(Jalan Sriwijaya)は、2003年に誕生したインドネシアの靴ブランド。
ここの靴の特徴は、ハンドソーンウェルト(ウェルテッド)製法とグッドイヤーウェルト製法を交ぜた製法を採用していること。履き心地が柔らかくなる点がウリです。この製法・この見た目でこの値段なのは狙い目だと思いますよ。
他の記事も……
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追記
- (2008年7月17日)商品を追加、入れ替え。
- (2009年8月23日)商品を追加、入れ替え。
- (2011年2月16日)2010年度秋冬最初の更新。
- (2012年2月23日)2011年度秋冬最初の更新。
- (2013年3月11日)2012年度秋冬最初の更新。
- (2017年4月30日)2017年春夏最初の更新。
この記事へのコメント
レフ
ご丁寧にありがとうございます。
なるほどですね。シングルのがアメトラっぽいのですね。個人的にはストレートチップよりもプレーントゥが好きなのですが
モンクだとちょっと野暮ったく見えるのは気のせいでしょうか。やはりモンクはストレートが王道でしょうか?
ジョンロブは高くて手が出ませんので5万以内位で手に入るモンクならここが王道でしょうという物をいくつか教えて頂きたいです。
因に普段は、上は無地のシャツかカットソー、下はデニムしか履きません。ストレートの股上が深いリーバイス等のレプリカをリジットで何本も履き回しています。
身長は170ちょっとあるのですが華奢なので靴に持っていかれない様に気を付けています。
モンクを買うなら色は、黒かネイビーと決めています。ヒロシツボウチのダブルモンクも気になりましたがスエードでしたのでちょっと....
よろしければまたご教授ください。お願い致します。
blackwatch
途中からコメント欄の位置を替えると、それはそれで第三者の人には分かりにくくなってしまいますね。第三者の人のために書いておきますと、これは以下の記事のコメント欄の続きです。
http://blackwatch.seesaa.net/article/2699517.html#comment
さて、シングルモンクならプレーントウ型、ダブルモンクならキャップトウ型が一番一般的な意匠だと思います。
「王道」をご希望ですが、John Lobb以外にダブルモンクの王道は特に思いつかないですねぇ。あとは、当ブログで紹介している靴の中でお気に入りのものを探していただければと。「王道」ならは、色は黒か茶系でしょうね。
(しばしば「オススメを教えてほしい」というコメントをいただくのですが、当ブログで紹介している商品がオススメの商品なのです……。取って置きの隠し情報なんて私は持っていませんし)
強いて言えば、Parabootのダブルモンクは有名かもしれません。昔John Lobbのカントリー寄りの靴をつくっていましたし。ノルウィージャン製法の無骨な靴で、カジュアルに特化するなら選択肢のひとつでしょう。ご予算からはちょっとはみ出しちゃいますが(「王道」は得てして安くないものなのです)。
http://blackwatch.seesaa.net/article/17649919.html
レフ
コメントありがとうございます。パラブーツは一足欲しいと思っていたのですがダブルモンクがあるとは知らなかったです。
まだまだ素人なもので。
貴重なご意見ありがとうございます。これからも参考にさせて頂きます。
また何かありましたら宜しくお願い致します。
blackwatch
ダブルモンクは、良くも悪くもちょっと派手めで分かりやすい靴だと思います。今っぽい着こなしに合わせるのは難しくないでしょう。
はっせ
いつも参考にさせていただいております。
現在ダブルモンクの購入を検討しております。
ONにもOFFにも合うという点が魅力の一つなのですが、黒色のダブルモンクはOFFのジャケパンなどに合うのでしょうか?
茶色ならわかるのですが、黒はどうしてもドレス色が強く、うまく合わせられる気がしません。
また、そもそもON/OFF兼用の靴、というのは難しいのか?とも思っております。
この2点についてblackwatchさんの考えをお聞かせ願えないでしょうか?
blackwatch
私としては、逆にダブルモンクにそれほどONの印象はないのですよ。90年代くらいまでは、ビジネススーツにダブルモンクを合わせる人はあまりいなかった記憶があります。良くも悪くもちょっと派手な靴なので、例えば(日本の)お堅い銀行員が履くのにふさわしい靴とは思いません。
ですので、黒であろうがジャケパンくらいなら普通に合わせられると思いますけどねぇ。例えば、紺ステンカラーコートにグレンチェック柄パンツという格好には普通に合うでしょう(好みはともかくとして)。
ONとOFF兼用の靴といえば、(ダブルに限らず)モンクストラップとUチップがよく挙げられます。外羽根式プレーントウもそうですね。トラッド寄りならウイングチップも入ってきます。もちろん、靴のデザインと着こなし方次第ですけど。