今日は、『チープ・シック(Cheap Chic)』という本をご紹介します。最近増刷されて入手しやすくなりました。
『チープ・シック』は、1975年にアメリカ在住のフランス人(たぶん)とアメリカ人の2人の女性によって書かれたファッションについての本で、ある程度以上の年齢のファッション好きの人なら少なくとも題名くらいは聞いたことがある人が多いのでは。ちなみに日本語訳は作家の片岡義男氏が手がけています。
内容は、具体的な着こなし指南のようなものは少なくて、思想・哲学をまとめた本といえるでしょう。著者が女性ということもあり、やはりどちらかというと女性向きの本でしょうね。
「お金をかけないでシックに着こなす法」という副題が付けられていますが、この本は貧乏人のための本というわけではないのですよ。冒頭に「ファッション・メーカーに命令されて服を着る時代は、もう終わっています」とありますように、おカネ云々というよりは、お仕着せでない個性的な着こなしを提案している本といえると思います。
提案している服は、古着、スポーツウェア、ワークウェア、ミリタリーウェア、民族衣装、などなど。いまでこそこの手の服を取り入れることはまったく珍しくなくなりましたが、この本はこの手の服をファッションとして明確に提案した最初期の本のひとつでしょうし、だから名著といわれるのでしょう。
ただし、トラッド不毛時代(?)の70年代(1970年代)に書かれていること、そして著者が女性ということもあり、トラッド色・コンサバ色は薄め。いちおうアイビーリーグスタイルなどについては言及されていますけど、このブログの読者向きの本とはあまりいえないかもしれません。
Popeye(ポパイ)2013年9月号に特集が……
さて、Popeye(ポパイ)の2013年9月号にて、『チープ・シック』が大きく取り上げられています。
ファッション有識者が『チープ・シック』についての思い出を語っている内容が主。Popeyeの考える現代版チープ・シック的な着こなしも提案しています。
個人的には、デザイナーの小林節正氏とスタイリストの石川顕氏の対談が面白かったですね。ちょっと斜に構えた(?)『チープ・シック』評。
- 「女性の本っていうイメージだった」
- 「(アメリカ)東海岸でないとこんな本出てこないよ。西海岸ははなからチープだもん(笑)」
- 「基本的に高学歴でお金持ちの人たちの本だよ。チープな人たちの本ではない(笑)」
- 「要は『粋』みたいなことに近いよね。見え方としてはシックだけど、値段はチープでなくてはいけないとか」
- 「当時、この本に書かれたことは提案であって実践ではなかった。でもその後、スタイリストや編集者たちが、誰に言われなくてもそうやって考える基盤を作っていったわけでしょう」
いま東京の原宿で奇抜なストリートスタイルをしている若者も、直接的ではないにしろ『チープ・シック』の影響を大いに受けているでしょう。
それでは。
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