今日は、冠婚葬祭、特に慶事(結婚式)の礼装・礼服(フォーマルウェア)について、このブログなりに考えてみたいと思います。《最終更新日: 2009年8月23日》
あ、結婚式と言っても、あなた自身の結婚式のことではありません(汗)。花婿の服装は、とりあえず格式の高い格好をするのが基本みたいですけど。
それから、あなたが花嫁・花婿の父親のような立場、つまり主催者のような立場の場合も、今回はあまり考えないことにします。まあ、今日紹介したような服でも大きな問題はないとは思うのですが。
略礼服って、どうなの?
略礼服という礼装があります。黒いスーツ(ダブル前が多い)に白いネクタイ(弔事は黒いネクタイ)、というお馴染みの格好です。
略礼服が「日本国内でしか通用しない」礼装だということは、皆さんご存知なのではないかと思います。近年は、いろいろな雑誌等でそういう記述を目にしますし。
確かに、海外のセレブや映画の中の結婚式の様子を見ても、略礼服のような服を着ている人は見かけませんね(そもそも、あまり黒い服を着ていない)。そうそう、欧米の人は日本の略礼服集団を見ると、「すわっ、ヤ○ザの集会か?!」と思うらしいですよ。
日本には日本のやり方があっていいのでしょう…
ただ、いわゆる式典(セレモニー)というヤツは、多分にその国の「お国柄」や「歴史」が反映されているものですので、「略礼服は絶対ダメ」とは私は思いません。海外の式典に参加するならともかく。
海外の状況を知った上であえて「これが日本のやり方なんだ、文句ある?」と胸を張るのも、それはそれでひとつの考え方だと思います。
でも…、でも…、略礼服って、あまり魅力的じゃないんですよね(汗)。というわけで、今日は略礼服以外であまりお金のかからない(?)礼装を紹介してみます。
ダークスーツでいいんです
略礼服がダメなら何を着るか? ですが、一般の招待客ならいわゆるダークスーツで問題ないでしょう。ダークスーツとは、濃いグレーやネイビーの無地スーツのこと。ストライプやチェックのスーツは、あまり礼装向きではないでしょうね。
と言うわけで、チャコールグレーのスーツで全然OKだと思います。つまり、仕事で着ているスーツを礼装として着る、ということ。安上がりで、このサイトの趣旨にも合います。
昼間の式なら、明るめのミディアムグレーのスーツも粋です。ただし、略礼服軍団(?)の中に混じると、ちょっと目立つかな。
ビジネススーツを転用する場合、気になるのが「パンツの裾」の処理。具体的には、ダブル仕上げはフォーマルにはどうかと言うこと。
確かにフォーマル時はシングル仕上げが原則なのですが、格式の高い式でなければ私はダブルでも問題ないと思いますよ(特に昼間の式なら)。
もちろん、冠婚葬祭専用のスーツを作るなら、裾はシングル仕上げにすべきとは思います。
昼の服、夜の服
夜に行われる式の場合には、グレースーツよりもネイビースーツ(紺スーツ)のほうが気分かもしれません。
イタリアのどこかのサルト(テーラー)が言っていたのを雑誌で読んだんですけど、「(スーツの色について)グレーは昼の色、ネイビーは夜の色」なんだそうです。言われてみると、確かに昼にはグレーのほうが映えるし、夜にはネイビーのほうが映えるなぁと、合点しました。
ネイビーと言っても、明るいネイビーなら昼のほうが映えますね。夜に映えるのはダークネイビー(濃紺)。
もちろん一般的には、昼にネイビーを着て夜にグレーを着ても全く問題ないと思います。ちょっとレベル(?)の高い話です。
ブラックスーツはどうなのか?
「ブラックスーツじゃあダメなの?」という声が聞こえそうですね。典型的な略礼服っぽくなければ、それでもいいんじゃないでしょうか。ネクタイ等を工夫して、他の客と差をつけましょう。
特に夜の式なら、ブラックスーツはよく映えると思いますよ。逆に、真っ昼間の慶事にブラックスーツを着るのは、私はあまり気分じゃないですね。
さすがにボタンダウンシャツは…
次にシャツです。まず、色はやはり白(ホワイト)の無地が基本。生地は、できればツヤのある高級感のあるものいいですね。目の粗いオックスフォード等は、ちょっとシンドイ(ロイヤルオックスはフォーマル向き)。
で、問題は襟型です。アメトラ(アメリカン・トラッド)ならボタンダウンと言いたいところですが、さすがにボタンダウンは礼装にはカジュアル過ぎるでしょう。
ここはレギュラーカラー(ストレートカラー)、あるいはセミワイドカラーが良いのでは。ウィングカラーを着るのは、私はちょっと気恥ずかしいです。
ちなみに、当ブログで推しているI型スーツにはあまりダブルカフス(フレンチカフ)のシャツは合わせないようですが、礼装なら合わせてもいいんじゃないかなぁ、と私は思います。I型以外の普通のスーツなら、断然ダブルカフスのシャツをオススメします。
ネクタイはシルバーグレー系が無難
次は、フォーマルスタイルの着こなしのキモであるネクタイ。とりあえず白いネクタイは評判が悪いので、やめといたほうがいいみたい。コーディネートという意味では、悪くないとは思うのですけど。
と言うわけで、慶事にはシルバーグレー系のネクタイが無難。無地(ソリッド)でももちろんいいのですが、ストライプ(レジメンタル)やドット(水玉)あたりも実は合わせやすいですよ。
堅苦しい式でなければ、もうちょっと華やかなネクタイでもいいと思います。ネイビーのドットタイやソリッドタイはかなりフォーマル度の高いネクタイなので、普通の式であればほぼ問題ないはず。
さらに明るめの華やかな色でツヤのあるネクタイも(サテン地のライトパープルとか)、実は慶事向きです。
…こう考えると、ネクタイはなんでもアリって感じ。そのぶん、難しいと言えば難しいのか。
靴は黒の内羽根式ストレートチップ(キャップトウ)
靴は、黒の内羽根式ストレートチップ(キャップトウ)がいいですね。ドレスシューズの基本。ピカピカに磨いておきましょう。
もうひとつの選択肢は、黒の内羽根式プレーントウです。外羽根式プレーントウはどちらかというとカジュアルな雰囲気ですが、内羽根式になると一転してたいへんフォーマルな雰囲気になります。タキシードにも合いそう。
特に夜の式なら、ストレートチップよりもプレーントウのほうが気分かな。
さらに、外羽根式でも鳩目(アイレット)が2~3個のプレーントウ、いわゆるVフロントの靴なら、十分フォーマル向きの靴になります。
ポケットチーフは必須
慶事では、ポケットチーフは必ず挿しましょう。これがないと、すごく寂しい雰囲気になってしまいます。
ポケットチーフの使い方については、別途ポケットチーフの記事をご覧ください。
コートについて
寒い季節には、コートは必需品。
礼装に相応しいコートと言えば、何と言ってもウール地のチェスターフィールドコート(チェスターコート)。シングル前でもダブル前でも構いません。色は、グレーか黒かネイビー。
トレンチコートは、礼装向きではないですね。どちらかと言えば、バルマカーンコート(ステンカラーコート、バルカラーコート)のほうがまだ礼装向きかな。素材はウールがいいのはもちろんですが、特に春先や初秋はナイロン系がオススメ。色はやはり濃色のものを。
でも、結局式会場ではコートは脱いじゃうので、何でもいいという考え方もなくはないです。
その他、ベルト、靴下、鞄、…
着こなしを引き締めるベルトは、ビジネス用を使えば問題ないです。色は靴に合わせて、黒。もちろん、サスペンダー(ブレーシーズ)をするならベルトは不要です。
靴下(くつ下、ソックス、ホーズ)についても、ビジネス用の黒でいいと思いますよ。薄手のものを。
腕時計(時計)については、黒い革ベルトのものを。持っていなければ、腕時計を付けないほうがマシかも。
ついでに財布(サイフ、ウォレット)については、長財布が礼装には相応しいかな。まあ、あまり重要ではないですが。
あとは、ウエストコート(ベスト)を合わせると、より礼装らしくなるでしょう。なくても問題ないですけど。
そうそう、礼服に合わせる鞄って、困るんですよね。手ブラなら理想なのですが、そうもいかないときも…。
ビジネスっぽくない、薄手の黒いクラッチバッグ(ドキュメントケース)あたりが良さそうですが、どうでしょう? 相応しいものがないときは、適当な紙袋あたりを使うほうが無難かな。
慶事の礼装についての知識
最後に、ちょっと慶事の礼装について書いておきます。といっても、これは本や雑誌に書いてあることの受け売りですけど(汗)。
洋装の礼装は、式の格式と時間帯で、着るべき服が分けられています。
昼の礼装
昼に着る礼装で最も格式が高いのは(正礼装)、モーニングコート。着丈の長い黒い上着に、グレーストライプのパンツを合わせます。新しい内閣が発足したときに、閣僚が着ているヤツですね。
昼の準礼装として、ディレクターズスーツというものもあります。黒い上着にグレーストライプのパンツを合わせます。ただ、この礼装は欧米でも通用するのかな?
夜の礼装
夜の正礼装は、テールコート(燕尾服、ホワイト・タイ)。着丈の長い黒い上着に、同じく黒いパンツを合わせます。ただ、今では指揮者やマジシャンくらいしか着ていないかも。
夜の準礼装は、タキシード(ディナージャケット、ブラック・タイ)。お馴染みの黒の上下ですね。今ではテールコートはほとんど着られていないようなので、タキシードが夜の正礼装と言ってもいいかもしれません。
なお、ダークスーツは、昼でも夜でも着られる略式の礼装です。
…要するに、真っ黒な格好は、夜の服なんです。タキシードを昼間っから着るのは、やめましょう。
内容には自信なし…
いろいろ書きましたけど、正直言って私は素人ですし(特に礼装は)、海外の事情にも明るくないので、今日書いた内容はあまり自信がありません(汗)。
と言うか、近年は礼装も多様化していますので、なかなか「コレで決まり」というものはないのでは? 上の内容は、現代ではちょっと堅めの内容かも。
結局のところ、空気を読んで周りから浮かないようにするのが肝要なのでしょう。逆に言うと、いくら服飾理論上正しくても、周りから浮いていたらその格好は「正しくない」ということ。
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追記
- (2005年8月12日)記述をちょっと追加、訂正。
- (2007年7月16日)記述をかなり追加、訂正。
- (2009年8月23日)記述を追加、訂正。
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この記事へのコメント
as
格式張り過ぎて、日本を含む君主国の宮中以外ではあまり聞きませんが。
慶弔両用なので大喪の礼などの葬儀関係でも着ることになっていますし、
タキシードが慶事の夜会専用なので理屈上は通夜には燕尾服になります。
やっぱり日本の冠婚葬祭にはブラックスーツがお似合いですかね。
(ちなみに勲章佩用規則により、一等勲章以上の正章は燕尾服に佩用することになっていますので、勲章佩用の儀典はおおむねホワイトタイになります)
ディレクターズスーツも礼服としては世界共通で外務省もそうアナウンスしていますが、
もう時代遅れではありますね。
blackwatch
もっとも、燕尾服を(特に昼間に)着る機会がある人はかなり限られた人でしょうねぇ。たぶん私は一生縁がなさそうです……。
nick
他のダークスーツと格に違いはありませんので勿論黒スーツと白タイで結婚式に出ることはプロトコル上も別に間違いではありません。
ただし一般の結婚式にダークスーツほどの格式は不要ですしさすがに地味な無地の黒ともなるとあまりにも喪の趣が強すぎます。
おめでたい席なら明るく華やかな装いのほうが相応でしょう。
不誠実な服屋の喧伝する出鱈目に振り回されないよう気を付けたいものです。
https://www.moss.co.uk/weddings
blackwatch
近年はブラックスーツを普段から着るようになったので(そのことの是非はともかくとして)、昔からの「いかにも略礼服」なブラックスーツではなくて、普段から着ているほうのブラックスーツを流用して着ている人が多いのではないかと想像します。
いかに国際ルール上「正しい」服を着ていても、場から浮いてしまうのはよろしくないと考えます。とはいえ無粋な恰好はしたくないですから、適度に「空気」を読んだ格好をすべきなのでしょう。地域(都会とか地方とか)や職業などによる式の雰囲気の違いも大きいと思われます。