『流行服: 洒落者たちの栄光と没落の700年』というムックが発売されていましたので、今日はそのご紹介。mono(モノ)マガジンの別冊の位置付けでして、ムックというより大判の単行本みたいな本です。
著者は長澤均氏で、ファッションについてかなり造詣の深い方とお見受けします。
題名から想像できるとおり過去の服の流行の変遷をまとめた本でして、どちらかというと男性服が中心です。写真資料がものすごく充実しているのに加え文章も充実していまして、しかも文体にクセがなく読みやすいですね。
表紙がブライアン・フェリーなので誤解してしまうのですが、実は戦後の服についての記述は全体の10%くらい、20世紀以降に範囲を広げても50%くらい。残り50%が14世紀から19世紀までの服です。
男性服について私なりにものすごーくざっくり内容をまとめると、こんな感じになります。
- 18世紀まで
基本的には華やかで派手な服。左右非対称、極端なトンガリ靴、コッドピース(股間の覆う布)、カツラ、などなど。流行の中心は王侯貴族。フランス革命の後は新興階級が登場し、少し地味になる。
また、宗教改革以後にピューリタン(プロテスタント)を中心として、禁欲的な黒い服が流行する。この流れが次の時代につながる。
- 19世紀
イギリス風がヨーロッパを支配する。黒を基調にしたプロテスタント的、禁欲的な服。今に通じるデザインの服になる。代表的な人物はボー・ブランメル。
ゴルフやテニス、バイクなどのスポーツウェアも登場。
- 20世紀
流行の中心が徐々に庶民に下ってきて、ファッションも多様化。オックスフォード・バグス、コロニアル・スタイル、ズート・スーツ、エドワーディアン、テッズ(テディー・ボーイ)、アイビー・スタイル、モッズ、サイケデリック、トミー・ナッター、パンク、ヒップホップ。
近頃はブラックスーツを着ている人が増えましたが、これはある意味19世紀調の復活といえるのかもしれません。
さて、「エドワーディアンとテディ・ボーイ」の記事の中で気になる記述が。意見の異なる人が少なくないような気も。
アメリカでは、エルヴィス・プレスリーの登場が大きなカルチャー変動をもたらしても若者によるモード革新は起きなかった。ジーンズやTシャツを肉体労働者ではなく若者が着るようになったり、革ジャンを着たバイカー・スタイルがマーロン・ブランド主演の映画『乱暴者』(53)とともに、世界に影響を与えたりしたが、大人とは確実に違うファッション・スタイルを生み出したのは、もっぱらイギリスだった。
というわけで、古い服の話が多いので普段の着こなしの参考にはあまりならないかもしれませんが、読み物としてだけでも面白い本だと思います。昔の洗濯についての話も興味深かったですね。最後に、あとがきの言葉もご紹介。
流行服とは何か? を極端にひらたく言ってしまえば、前の世代への反抗ということになる。(中略)もうひとつ、流行服には「舞台」も必要である。他者の視線なしにモードは生まれない。(中略)絶えざる差異化と、他社とは違う自分という意識から流行というものが発生する。だから反抗の歴史という縦糸と、差異化の横糸を紡いでいけば、必然的に「ファッション史」というものができてしまう。
戦後の流行服については、ちょっと趣向は違いますがこちらの『ザ・ストリートスタイル』という本もオススメです。
それでは。
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