今日は、『オフィシャル・アメリカン・トラッド・ハンドブック』(“Official American Trad Handbook”)という本をご紹介。今年出版されたアメトラ(アメリカン・トラッド)についての新しい本です。
著者は、伊藤紫朗氏。生年は分からなかったのですが、1953年に大学を卒業されたそうですから80歳くらいの方でしょうか。ファッション業界ですこぶる長く活躍されていて、そしてアイビー世代の人ならマクベスというブランドの創設者としてもおなじみでしょう。“Take 8 Ivy”(『テイク・エイト・アイビー』)という本の著者でもあります。
書名に「オフィシャル」とありますが別にどこかの機関が認めたとかそんな話ではなく、有名な『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』(“Official Preppy Handbook”)をもじって命名されたのでしょうね。
まず最初に、著者はアメトラについて以下の4つに分類しています。
- アイビー・リーグ・スタイル
アメリカの名門私立大学8校の通称アイビー・リーグのスタイル。基本です。
- プレッピー・スタイル
著者は、近年復活している21世紀的アメトラをプレッピー・スタイルと呼んでいます。
- リアル・トラッド・スタイル
アイビー・リーグ・スタイルが普及した1950年代後半に、老舗ブランドなどが差別化するために自らのスタイルを「トラディショナル」と呼んだとのこと。それを著者は便宜的にリアル・トラッド・スタイルと呼んでいます。
ただ、名称はともかく、アイビー・リーグ・スタイルとの具体的な着こなし方などの違いは私にはよく分かりませんでした……。
- ブリティッシュ・アメリカン・スタイル
イギリス調を取り入れたアメトラ。ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)が代表格です。
各章の内容について、以下に軽く触れてみます。
- 序章 アイビー、トラッドとともに50年
著者の体験談をからめながら、アメトラの歴史がつづられています。ここまでアメトラ体験の豊富な日本人は他にはそうはいないでしょう。石津謙介氏の逸話も興味深いですね。
- 第1章 21世紀のアイビー、トラッドは「プレッピー」
近年復活したアメトラの傾向についてまとめています。それはいいとして、日本の「セレクトショップ」の商品についても触れているのはどうかなぁと。日本のセレクトショップの商品傾向なんて数年で大きく変わりますから、この内容はすぐに陳腐化してしまうような……。
- 第2章 ブルックス・ブラザーズ、J・プレスにみるアメリカン・トラッド・スタイル
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アメトラを代表する2大ブランドであるブルックス・ブラザーズ(Brooks Brothers)とJ・プレス(J. Press)の歴史、およびその製品の特徴をまとめています。
- 第3章 アメリカン・トラッド・スタイル
この章がこの本の中心といえるでしょう。アメトラの主要アイテムや主要生地、礼装の考え方などがまとまっています。例えば、スーツについては以下の3つが挙がっています。
- ピュア・アイビースーツ
- サックスーツ
- ブリティッシュ・アメリカン・スーツ
意外だったのが、靴についての記述がイマイチ充実していないこと。ある程度以上の年齢の方には、フローシャイム(Florsheim)などの舶来靴は高価すぎてなじみがなかったというのもあるのかなと(昔は1ドルが360円でしたし)。
- 付録 海外で通用しないアイビー・トラッド用語集
主に和製英語について。まあこのへんの言葉のかなりの部分はヴァン・ヂャケット(VAN Jacket)がつくったんでしょうけどね。
正直申しまして、私は著者と100%意見が合うわけではありません。70%くらいでしょうか。この手の本では仕方がないとはいえ、若干の説教臭さも感じなくはないです。例えば、著者はクール・ビズ(Cool Biz)についてかなりお気に召さないご様子。まああれは欧米のルールには合致しませんからねぇ。
それでも、アメトラ入門本としてこの本は大いに読む価値があると思います。『IVY Illustrated - 絵本アイビーボーイ図鑑』は今では入手が難しくなっていますし、読みどころもそれぞれで異なりますし。できることなら、先に『絵本アイビーボーイ図鑑』を読んで、次にこの本を読むのがよさそうな気がするのですが。
そうそう、『絵本アイビーボーイ図鑑』でおなじみの穂積和夫氏、そしてやはりトラッドがお得意なソリマチアキラ氏が手がけるイラストにも注目してください。
それでは。
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この記事へのコメント
kassi
いつも楽しくブログ読ませていただいてます。
早速、こちらの書籍を購入してきました。今度、友人の結婚式に1型のブレザーで出席する決意を固めたところです(笑)そこで、ご意見を伺いたいのですが、ブレザーに合わせるパンツの裾はシングル、ダブルどちらがいいのでしょうか?フォーマルの場なので当然、シングルだと思うのですが、ブレザーに合わせるのでダブルの方が合うのではと思ってるのですが。個人的には、シャツがボタンダウンでもいいのであれば裾はダブルでもいいのではないかと思っております。
blackwatch
I型ブレザーは、Batakがつくっているような端正なものでなければ、仰るとおり裾はダブルのほうが合わせやすいと感じています。ブレザーで問題ない式であれば、裾のダブルくらいなんら問題ないのでは。
といいますか、結婚式にスーツを着る場合でも、相当格式の高い式でなければダブル裾で構わないと私は考えています。私自身は平気でダブル裾で出席しているんですよ(ビジネススーツを転用)。もちろん、宮中晩餐会とかに呼ばれたのであればシングルにしますけど……。
kassi
そうですよね、厳格なフォーマルのルールを適用しなければならない場ってそうないですよね。燕尾服が必要なパーティにも出席してみたいですねw
友人の結婚式などは、ダークスーツにボウタイで出席していたのですが、パーティっぽくなるからか、けっこう、ホストに喜んでいただいてます。ルールの適用も大事ですけど、ゲストとしてお祝いをするという気持ちを服装で現すということも大事ではないかと思ってます。もちろん、自分がそういう服を着たいということもありますけど。今回はブレザーに、ボウタイで出席してみようと思います。
また、ちょくちょくコメントさせていただきます。よろしくお願いします。
blackwatch
ご友人の結婚式だとたぶん式の様子を想像しやすいでしょうね。きっと堅苦しくない式でしょうから、ブレザーにボウタイという格好は素敵だと思いますよ。
当ブログのフォーマルウェアの記事にも書いておりますが、礼装については「空気を読む」ことが肝要と考えます。いくら「正しい」格好をしたところで、周囲から浮いてしまうとつらいものです。