『絵本アイビーボーイ図鑑』と『絵本アイビーギャル図鑑』といえば、アメトラ(アメリカン・トラッド)、そしてアイビースタイルの入門書として必須の本といえます。
これらは1980年に刊行された本ですが、既報のとおり34年ぶりの続編『絵本アイビー図鑑 The Illustrated Book of IVY』が登場しました。もちろん著者は引き続き穂積和夫氏です。
当ブログの読者の方には「余計なことを考える前にさっさと買っとけ」と言いたいところですけど(汗)、いちおう内容について軽く触れておきます。
- 外観など
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私の持っている『絵本アイビーボーイ(ギャル)図鑑』は2003年の復刻版ですが、外観はそれよりもひと回り大きくなりハードカバーになりました(個人的には小さいほうが読みやすいんだけどなぁ)。全ページがカラー印刷になったのはたいへんうれしいですね。
イラストも文章もこの本のための書き下ろしのようで、『アイビーボーイ』などとの重複はないのでしょう。『アイビーギャル』の続編でもあるので女性服も載っていますが、基本的には男性服が中心です。
- チノパンツ(チノパン)
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パンツとして「いの一番」にチノパンツ(チノパン)が挙げられているのが意外でした。前刊の『アイビーボーイ』のほうにもそれっぽいパンツはあったのですが、私の見落としがなければ「チノパンツ」の文字はなかったはず。
アイビー全盛期である50年代(1950年代)や60年代(1960年代)には、チノパンツはまだ一般的ではなかったということでしょう(ツイル系の似たパンツはあったと思いますけど)。当時のコットンパンツといえばポプリンやコーデュロイの印象が強いです。ただ、前刊が刊行された1980年にはすでにある程度は一般的になっていたかも。
とまあこんな感じで、全体的に現代の感覚を少し加えた内容になっています。
- M65型フィールドジャケット、キルティングジャケット
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新たなアイテムもいろいろ加わっています。M65型フィールドジャケットやワックスジャケット(オイルドクロス)などなど。純粋なアイビーアイテムとはいえない服で、昔の日本人があまり着ていなかった服です。ローデンコートが増えたのは個人的にはうれしいですね。
その代わり、ラクーンコートなどはなくなりました。まあ今は毛皮が難しい時代ですし。
ところで、この本には各アイテムに英語表記も併記されているのですが、所々和製英語を直訳しているものがあるのが気になります。例えば、“quilting jacket” ではなく “quilted jacket” あたりが正しいと思うけどなぁ。
- プレッピー
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前刊の『アイビーボーイ』には登場していなかったプレッピースタイルが取り上げられています。ファッション的な定義だと1980年前後に盛り上がったアメトラスタイルといえるのでしょうが、この本ではそういう時代背景の説明はなく、「若者向きのテイスト」と紹介しています。
前刊刊行時はちょうどプレッピーが盛り上がりつつあった時期のはずですけど、時期がギリギリだったので紹介が間に合わなかったのだと思われます。当時は評価もまだ定まっていなかったでしょうし。
- そのほか
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前刊『アイビーボーイ』にはアメリカのアイビーリーガーの文化・風俗などが紹介されていましたが、この本ではそういうのはなくなりました。内容をファッションに特化したといえます。その代わりというか、「ヤングファッションの50年」という特集が登場しました。
日本ならではということで、着物特集も新たに加わりました。子ども服特集も加わりましたが、顔が同じアイビーボーイなので大人とあまり違いがないですね……。そうそう、フォーマルウェアは前刊よりも少し充実しました。
内容が現代的になったとはいえ、アイビー「こてこて」の部分もやっぱりあります。そのへんはご愛嬌ということで。
例えば「後ろボタンとプリーツとループは、ボタンダウン・シャツの最大の特徴で、これがないとアイビーのシャツとは言えないのだ」という記述とか。そのあとで「省略した製品もあるけどね」とフォローしていますけど。ブルックス・ブラザーズ(Brooks Brothers)のシャツには、後ろボタンとループはあまり付いていないですね。
ということでいろいろ書きましたが、とりあえずこの本は黙って買っとけと(結局それか)。アイビーの歴史のようなウンチクは、『オフィシャル・アメリカン・トラッド・ハンドブック』あたりで補いましょう。
ところで、前刊『絵本アイビーボーイ図鑑』はそれはそれで復刻してほしい感もあります。
それでは。
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この記事へのコメント
an
『絵本アイビー図鑑 The Illustrated Book of IVY』発売日に即購入しました。
イラストのうまさと軽妙な文章があいまって、わかりやすく充実した内容でした。
カバーをはずすと赤いタータンチェック模様の本体があらわれて、装丁のおしゃれさにも惹かれました。
もっと早くこういった本に出会えていたら、アイビーに限らず服装そのものに早いうちから関心を持てていたんだろうな、と思えます。
このブログ内でも様々な書籍が紹介されていますが、『絵本アイビー図鑑』の他にもblackwatchさんのお気に入り、あるいはおすすめの一冊はございますでしょうか。
blackwatch
この本はイラストなので、うまい具合に流行から距離を置けて古びない点も良いところかと。写真だと、髪型とか細かいところが気になってしまいます。
おすすめの本ですか。あればこのブログで紹介しております(出し惜しみするほど読んでおりません……)。私は読んでいませんが、ヴァン・ヂャケット関連の本はアメトラ好きならそこそこ楽しめるのではないかと思います。着こなしの参考になるかはともかく、歴史本として。