
今日は、『ヘビーデューティーの本』という本を読んでみます。1977年に発行された本です(2013年に一部改訂)。
ヘビーデューティーとは
英語の “heavy-duty” には本来は「頑丈な」などの意味しかないのですが、70年代(1970年代)のメンズクラブ(Men's Club、メンクラ)がファッション用語として大々的に取り上げました。要は、アウトドア系のスタイル、そして広義ではアウトドア系の趣味全般のことです。
当時アイビースタイルは下火でして、それに代わる新たな軸が欲しかったのでしょう。ヘビーデューティー・アイビー(略してヘビアイ)とヘビーデューティー・トラッド(ヘビトラ)という、よりファッション寄りの用語も生まれました。
その仕掛人といえるのが、今日取り上げる『ヘビーデューティーの本』の著者である小林泰彦氏。イラストレーターであり文筆家でもあり、この本を含め単著もそれなりにある人です。この本は自身によるイラストも満載。
けっこう本気な本です

書名のとおりヘビーデューティーについての情報をひととおり説明した本でして、とりあえずこの本を代表するファッションアイテムは、シエラデザインズ(シェラ・デザイン、Sierra Designs)のマウンテンパーカーだと思いました。著者が高く評価していることが伝わってきます。60/40クロスについても、画期的な生地として高く評価しています。
ダウンジャケット・ダウンベストも、この本の主役のひとつ。ダウンの服が街着として一般的になったのは70年代からといえるでしょうから、まだまだ目新しいアイテムだったのです。
クラシックなマウンテンパーカーやダウンベストは、いまの我々からみると古風な服なのですが、当たり前ですが当時は最新の機能服だったわけです。そう考えると、いまの我々の趣味は単なる懐古趣味なのだなと。このへんはミリタリー服におけるM-65とかMA-1とかと似ているかも(いまは軍隊では使われていない)。
用語集なども充実していまして、当時のヘビーデューティー少年は大いに参考にしたことでしょう。ブランド紹介の章では、当時のエディー・バウアー(Eddie Bauer)の「ファッショナブル化」についてお小言を言っているのが興味深いところ。
実はこの本は、けっこう本気なアウトドアの本なのです(後述のインタビューによると冗談も入っているそうですが)。ナイフや丸太小屋、バックパックの詰め方などについて、それぞれまるまる一章を費やしています。アウトドアに興味のない人には、このへんは退屈かも。
この本の私にとっての最大の魅力は、当時のアウトドア服やアウトドアブランドの位置付けと評価が分かることですね。
当時の気になる用語

細かなことですが、当時の用語について気になりました。当時の一般的な用語なのか、それともこの本独自の用語なのかはよく分かりませんが。
まずは「ルックサック」。リュックサック(バックパック)のことなのですが、これはもともとはドイツ語なのです。実はドイツ語でも英語でも発音は「ルックサック」(もしくは「ラックサック」)らしく、「リュックサック」というのは何語でも正しくないと思われます。
いわゆるスウェットパーカーのことは、この本では「フーデッド・トレーナー」と表現していました。「フーディー」という表現はおそらく英語でも当時はまだあまり普及していなかったのでは。「トレーナー」は、もちろんヴァン・ヂャケット(VAN Jacket)が命名した和製英語です。
「アウティング」という言葉もよく出てきまして、これは「アウトドア活動」のような意味で使っているのだと思います(英語にもそういう意味はある)。現在の日本ですと、この言葉はLGBT用語として主に使われていますね。
小林泰彦氏と新著について

小林泰彦氏については、こちらの記事が参考になります。まさに多芸多才な人といえます。
- アイビーとアウトドアをひとつにしたおじさん イラストレーター小林泰彦の〝ヘビアイ〟暮らし(前編)|連載『『ぼくのおじさん』インタビュー』vol. 18
- Japanese Ivy Artists: Part Three, Yasuhiko Kobayashi - Ivy Style
そして昨年、御年90歳(!)にして新著『ヘビトラ大図鑑』が出ました。残念ながら私は未読なのですが、いつか読みたいなと。

それでは。
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